ソーイングテーブルの誕生日

2006 04 05  

2006年4月5日。雨。 桜は8分咲き。
約1年ぶりにお見かけした玉井さんは、とても美しくなっていた。
少し痩せたように思ったのは気のせいだろうか。
新しくマスターに就任した「相方」さんは、テーブルの上で新しいマッチ箱をもくもくとつくっていた。

 

低いテーブル席でいつものようにテンコトーストと、寒かったのでサイホンミルクコーヒーを飲んでいると、雨がだらだらしたたるあけっぱなしの出入り口に中山先生が現れた。
黒のフォーマルスーツにピンクの蝶ネクタイとピンクのベレー帽といういでたちで、

「ハッピーバースデイトゥーユ〜
 ハッピーバースデイトゥーユ〜
 ハッピーバースデイ ディア えみこ〜
 ハッピーバースデイ トゥ− ユ〜〜」
と歌い終わると、条件反射でお客さん全員がぱちぱちと拍手をした。

ケーキらしい箱の入った袋を玉井さんにさっと手渡して去ろうとした中山先生に、
「え、もう行くん? 
そのかっこう、わざわざ着替えてきたん?」と玉井さんが聞く。
「今日葬式やってん」

おどかしてすいません。
いつもあんなんなんです。
葬式て…
と、玉井さんはつぶやいた。

ふと後ろから、やさしく誰かが私の肩にふれたと思ったら、それはいつもの白いカーテンだった。

 

 

 

 

 


お会計の時、てっきり玉井さんの誕生日に出くわしたとばかり思った私は、
「お誕生日おめでとうございます。いいとこにきました」
と言ってしまったのだけど、その時ぽんと手渡されたできたて新作マッチを星ヶ丘の駅で電車を待ちながらまじまじ見ていると、こう書いてあった。

「弦をはじく
 草はらのくさはおどり
 くるるゆげ
 そこに音がうまれ
 唄うたう人がつどう
 その日がきて
         2006.04.05 4years」


そういえば今日はソーイングテーブルの誕生日だったんだ、とやっと気づいた。
でもたぶん、どちらでもよかったんだと思う。

 

http://homepage3.nifty.com/h-gakuen/19ochaya.htm

 

 

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