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電車を乗り継ぎ3時間かけて黒磯駅に着くと、すぐ「湯本方面行き」のバスにのる。
景色は途中から大きな川を越えて、冬枯れの森のなかへ。
20分ほどでバスは「NASU SHOZO
CAFE」の黒い看板が見える。まるでモダンアートの美術館に到着したみたいだ。650円。
広い駐車場があってゆったり建てられた平家作りの店。
中に入ると、ホテルのロビーのように落ち着いた照明の席と、白く塗られて日がさんさんと差し込むテラス席、という構成になっていた。
どこまでも続きそうな広々としたSHOZOの店内は、それまで「トリックアートの館」とか、「ペンション風夢風夢」みたいなものをいくつも見てきた私には、突然あらわれた完成度の高い店内が、ちょっとしたユートピアのように思えた。
暗めの照明の中に味のある皮張りの椅子や木のテーブル(というより、机)があるカフェの風景は、東京でも見ることがある。私はステンドグラスからの色とりどりの光がさしこむテラス席のほうに座った。
白いシャツを着た美しいギャルソンたちはきびきびと、そして笑顔をうかべて立ち居振る舞い、しゅんしゅんともえるストーブの上に水をはったほうろうのボウルを置いていく。
メニューは飲み物のほかはデザートやスコーンが中心。ちょうどお昼どきだった私はサンドイッチセット(1200円)をオーダー。
オーダーするやいなや落ち着きなく店内を探険して本を物色してしまう私に、スタッフの男性はにっこりと「もうすぐお席にお持ちしますから」と声をかける。ああ、当たり前だけれどすばらしい接客。席にもどった私の前に置かれたのは、放射状に置かれたひとくちサイズのサンドイッチと、「森のブレンド」コーヒー。これだけのために私はわざわざ東京からやってきた。
サンドイッチにはふわふわの卵とこぼれそうなほどのトマト、そしてかくし味にシソが1枚入っている!
SHOZOの素晴らしいところ。新聞が置いてある。家族連れが多い。
ディモンシュにしてもそうだが、私はこういう開かれたカフェが好きだ。中途半端な記号のような家具や雑貨が置かれて、おしゃれな若者しか入れないという雰囲気はこりごり。本当の完成度は、高いまま誰もを受け入れるものだと思う。
私は新聞を取っていないので、SHOZOで新聞を開く。(これ、進々堂でもやりました)
前の席には小さな女の子を連れたおかあさんがいる。この空間は10才の頃の私を丘の上のある喫茶店が魅了したように、彼女の心にも静かに深い衝撃を与えているんだろうか。
サンドイッチを口にほおばってコーヒーをひとくち飲んで、とやっているうちに、またたくまに両方ともなくなってしまった。コーヒーは濃いときいていたが非常にすっきり飲みやすく、すぐ2杯めを求めて黒磯店への移動をきめる。外へ出てバスまでの時間、少し森のなかを散歩する。いちめんの落ち葉と、どこまでもやわらかく沈んでいってしまいそうな腐葉土の森。(2004 12/9)
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